「どうしても靴が合わない」は危険信号! シューフィッターがすすめる正しいシューズ選びとインソールの重要性
「どうしても靴が合わない」は危険信号! シューフィッターがすすめる正しいシューズ選びとインソールの重要性
歩き疲れやすい、膝や腰に違和感がある…そんな不調の原因が「足元」にあることをご存知ですか?私たちの体を支える足裏のバランスが崩れると、全身に負担がかかり、姿勢や歩行にも影響を及ぼします。そこで注目されるのが、正しい足のアーチをサポートするインソール。スポーツや立ち仕事、日常生活の快適さを左右するインソールの選び方と、その効果について、シューフィッターであり「プロシューズアドバイザー」の佐藤 靖青さんが解説します。
経歴~シダスとの出会い
シューフィッターの佐藤靖青です。
シューフィッターとの肩書とは別に、「プロシューズアドバイザー」として、おひとりおひとりに合うお靴を一緒に探す、靴に特化した日本初の「靴のお買い物アテンド」の仕事もしています。
靴をオーダーする余裕はない、けれども既製品の中からどれを選んだらよいのかわからない方は本当に多いです。ウォーキングから革靴、お子様の靴に至るまで、その方の歩き方やお悩みまで考慮して、最善なお靴をさがします。
もともとは約10年間、靴の設計をしていました。
学生時代に陸上の短距離に打ち込んでいたこともあり、陸上シューズからスニーカー、靴全般に興味を持ち始めたのがきっかけで、大学卒業後に1年間、紳士靴の本場のイギリス・ノーサンプトンの靴学校に通って基礎を学びました。
帰国後に靴の設計会社に就職。20代の10年はほぼ毎日、朝から深夜0時過ぎまで、靴の設計・サンプル制作に追われる日々を過ごし、30代からは実際に手を動かす靴リペアの世界にいました。
靴のリペアをしているときに、靴の壊れ方にずいぶんと個性があることに気づいたんです。直しても直しても同じ場所から壊れる靴もあり、はじめて「靴と足がフィットしていないと、靴は際限なくこわれる」ということに気づき、猛勉強してシューフィッターの資格を取りました。14年前のことです。
そのころシダスのインソールとも出会い、インソールだけでこんなにもフィット感が向上するのかと驚きました。
現代人と足の環境
シューフィッターとして痛感するのは、フィットしていない靴は凶器にしかならない、ということです。
スニーカーが良い例ですが、とにかく「クッションがすごい」としか謳っていない製品が多すぎます。クッションももちろん大切ですが、沈み込みすぎて力が逃げてしまうこと・ソフトで足あたりが良い分、立ち方・歩き方が不安定になった結果の関節のブレには気づけません。
特に多いのが、スニーカーが変形するほど内側にねじれているオーバープロネーションの状態。なかなか自分では気づけません。
靴を脱いでもらって、ご自身の目で靴のねじれを見てもらって、はじめて驚かれる方は沢山いらっしゃいます。整形外科や整体に通っても一向に膝や腰が良くならない原因が、じつは足当たりだけがソフトなスニーカーにあることにはなかなか気づけないものです。
スポーツシューズのメーカーのほとんどが、実はインソールが簡単に外せる仕組みになっています。私はそれが靴を設計した人からの隠れたメッセージであると考えています。
靴はあくまで足を受け入れる器であって、直接足とふれるインソールはカスタムが可能、ということはもっと多くの方が知るべき常識ではないかと考えています。
高機能インソールの役割
世間一般にイメージされるインソールというものは、まだまだ「靴をきつくするための中敷き」という先入観が強いのですが、私はよく「インソール=マウスピース」に例えています。
マウスピースを使って歯と顎を適正に嚙み合わせると、より高重量を上げることや体の軸も一気に安定することが知られていますが、靴と足の関係もおなじこと。足のアーチや踵がホールドされてフィットすることで、体のコントロールは瞬時に驚くほど変わり、イメージした通りのブレない歩き方ができるようになるのです。理由はシンプルで、体に軸が一本通るから。
シダスのような高機能インソールは、骨格をダイレクトにサポートします。
インソールの下についているプレートがある程度硬いことが重要。実際にインソールをさわると「こんなに硬いと思わなかった」と驚かれる方がほぼ全員です(笑)。それくらい硬くても、骨格にフィットするので痛みや異物感はまったく感じません。安い製品と高機能製品の最大の差がここです。硬くて軽くしなやかであること。いうなれば第二の骨格というのが、シダスに代表される高機能インソールなのです。
日常シーンとインソール
スニーカーがどんどん機能がアップしているのに、体の故障を抱える方は一向に減りません。
体の使い方が負けてしまっているからだと私は考えています。たとえば頭の重さは成人の平均で6キロほどありますが、これが体の頂点にくっついているわけで、生活とは6キロの重量を運ぶこととも言えます。ほんの小一時間ほどの外出であっても、6キロの重さを手で抱えて持ち歩くなんてできないでしょう。だから頭があるべき場所に乗っていること、それを支える首から下の体の軸と体幹が安定して、最後に行き着く先の足元が言葉の通り「地に足が着いていること」が本当に重要なんです。
仕事だとさらにハードですよね。頭部の6キロ+上半身の重量に振り回される立ち仕事、不安定な姿勢での仕事は確実に関節にダメージを残します。変形性膝関節症や椎間板ヘルニアなどが代表でしょう。
整形外科に通っていても、なかなか改善しなかったりくりかえす方のほとんどは、あくまで個人の経験ですが、ソフトすぎる靴やインソールを日常的に使っている方が多いように感じます。旅行やスポーツだと、さらに動きは不規則になり、足元~全身に加わる衝撃は靴のクッションだけでは足りません。サポートしてくれるインソールが大きな仕事を果たしてくれます。
おすすめのシダスのモデル
個人的に私がお客様におすすめしているシダスが3つあります。
ひとつめが、「コンフォート3D」。
はじめての高機能インソールを試す方には最適です。ウォーキング・軽いランニング・リハビリ中のかたにはまずこちらを試してほしいです。あらかじめ入っているスニーカーのインソールを抜いて、これに差し替えるだけ。踵周り~土踏まずまでが安定するので、履けば1秒で違いがわかります。安定するってこういうことだったんだ、とわかるはずです。かといって過度に足に干渉するわけでもないので、足先はむしろ開放感が生まれます。大型スポーツ店にもよく置かれているので、ぜひ試してみてください。
コンフォート3D
ふたつめが、「シティプラス」。
特徴は、とにかく薄い。インソールが抜けない靴に入れても、厚みが1.8ミリほどですのでそこまで違和感は感じないはずです。今は「ビジネスカジュアル」的なレザースニーカーを履くシーンも多く見られますが、インソールが取れないものもまだまだあります。なんかしっくりこないな……と感じたらシティプラスがいいですね。プレートもかなりしなるので、どんな体の動きにもついてくる「いぶし銀」のような存在です。
シティプラス
最後にインソールではありませんが、室内用リカバリーサンダルの「ウチッパ」。
私も在宅ワークの時間が多い方ですが、2年前から毎日ずっと愛用しています。座りっぱなしで足がむくむ方や、逆に日中が立ちっぱなし、歩きっぱなしの方でも、ウチッパで自動的に正しい骨格にリセットされます。ウチッパは「音」にも「蒸れ」にも強い。足の裏に当たる場所がウロコのように成型されているので、汗をかいてもまったく気になりませんし、気軽に水洗いもできて衛生的。なによりガンガンに血流を回してくれるので、1時間に2~3分ほど室内を歩き回るだけで足が温かくなるのがわかります。
ウチッパ
正しいシューズの見分け方
まず最優先なのが、どんなスタイルの靴であっても「インソールが取り出せること」。スニーカーでもビジネスカジュアルでも、あるいは子供用やシニア用シューズでも、いまだにインソールがしっかり接着されていて、取り出せないメーカーはまだまだあります。その時点で「動ける・歩ける」というよりは「魅せる」ためのシューズである可能性が高いので、やめたほうが無難です。
もうひとつは、「なんの目的のシューズなのか」を知ること。非常に多いケースですが、「歩くためのシューズ」をそもそも選んでいないケースが本当に多いです。
スニーカーならなんでも履きやすいと勘違いをして、本来はバスケ用やテニス用などの、どちらかというと「歩く」よりは「止まる・ダッシュする」ための靴で歩いてしまって足を痛める方は多いです。このあたりはショップのスタッフさんに遠慮なく聞いて、これは歩くための靴ですか、と素直に聞いてください。
最後に、「数字にだまされないこと」。
ご自身の足のサイズを勝手に24㎝で、3Eなどと思い込んでいる方も男女問わず多いのですが、実はもっと幅がせまかったり、逆に加齢で足のアーチが落ちてしまい、数年で幅がひとまわり変わってしまう方も。靴もまた然りで、「3E」と書いてある靴が本当に3Eの広さがあるかどうか、じつは怪しい靴も多いのです。
幅広=売れるからなんですが、本当の適正サイズは足が一番正確に教えてくれます。サイズ表記もメーカーによってバラバラなので、履いて店内をしっかり歩いて、足が心地よいと思った靴・サイズが正解です。
ショップ選びもコツで、本当に歩ける靴をさがすなら個人的にはメガスポーツ店がお勧め。靴だけではなく、必ずインソールのサンプルも置かれているからです。靴単体で何足ためしても「しっくりこない」と感じたら、インソールと組み合わせて試着しましょう。
踵周りがせまかったり、偏平足の場合には靴単体で探すのは困難です。インソールとの合わせ技で最高の1足があっさり見つかることも多いので、なるべく多くのインソールが販売されているショップから選ぶことも、靴選びとおなじくらい重要です。
【プロフィール】
佐藤 靖青(さとう せいしょう)
シューフィッター・プロシューズアドバイザー・靴ブロガー。
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアとフィッティングの世界へ。3年前に独立し、現在は足と靴の相談を一手に引き受ける「プロシューズアドバイザー」として活動中。
ホームページ(https://sfkomatsu.com/)。
YouTube『シューフィッター佐藤靖青・足と靴のスペシャリスト』 https://www.youtube.com/@shoes_komatsu 。
毎日更新の靴ブログ『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』 https://shoesmaster-komatsu.com/ は月間約35万アクセス。